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縁の下の力持ち

今回はクルティーヌの料理に多大に貢献している名脇役達を紹介します。

まずは、料理の真髄となる、”ビヤン・アセゾネ・ビヤンキュイ(良い下味と良い火入れ)”に必要不可欠な役者から。


・フルール・ド・セル・ド・ゲランド (塩)

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大西洋に囲まれたブルターニュの半島(フランスを大雑把に星形に見た時の左手のあたり)の南側にあるゲランドと呼ばれる、様々な野鳥達が集まる場所。
ゲランドの塩職人達は、この地で1000年以上も先祖代々から伝わる製塩法をかたくなに守っています。
干潟の高低差によって塩田に海水を引き込み、太陽と風邪の恵みだけでゆっくりと結晶にする塩。いろいろと海のエキスが含まれる為、滋味豊かな証となるわずかに灰色を帯びた白。
収穫後、さらさらに保つ為の個結防止剤は一切添加されていないので、わずかにしっとりと水分を含んでいる。

塩田の水面に最初に浮かぶ小さな白い結晶(静かに浮かんでいるので、ひと雨降っただけで台無しとういう儚さ。)を“花びらを摘むように”手作業で丁寧に収穫した希少な塩。そこから「フルール ド セル(塩の花)」という名で呼ばれるようになったそうです。


・ソニエ・ド・カマルグ ベルル・ド・セル(塩)

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地中海を望むローヌ河口のデルタ地帯カマルグ西部にある、"エグモルト Aigues-Mortes"。
その塩田で作られるカマルグ産の塩は土壌の性質のおかげで、精製していないにもかかわらず、美しい純白色です。
こちらでは最初に塩田の表面に現れる物を『ベルル・ド・セル(塩の真珠)』と呼び、生産者は『ソニエ(塩を作る人)』と呼ばれます。

カマルグを訪れると、スペインに近いので、トロ(闘牛)を見れたり、野生のフラミンゴの群れがいたり、真っ白な白馬がお出迎えしてくれる、非常に美しい湿原が広がる場所でした。
ちなみにこのあたりの海は、うっすらピンク色に見える事があります。プランクトンや、小さな海老が沢山集まってそう見せるようで、「だからそれを食べるフラミンゴはピンク色なのだよ!(ホントか?)」だそうです。

さて、
・ブルターニュ地方のゲランド
・ゲランドの南に位置し、同じ大西洋岸のイル・ド・レ(レ島)
・プロヴァンス地方のカマルグ
と、フランスの著名な自然海塩の産地は3つあります。

ゲランドのフルール・ド・セルは、
びしっと鋭角。それでいて真の太い塩味ベースで、にがりを良く感じる。苦味、こく、甘み、鼻を抜ける海の香りが全体を柔らかい印象にする。なんかバリっぽい。洗練された感じ。

一方、カマルグのベルル・ド・セルは、
丸みのある、それでいて重心の低い塩味ベースで、苦味、こく、甘み、鼻を抜ける海の香りが全体を柔らかい印象にする。海の味をそのまま凝縮させた感じ。なんとなく田舎っぽい。のどかな感じ。

イル・ド・レのフルール・ド・セルも美味しいですが、ちょうどゲランドとカマルグをたして2で割った感じの味わい。なので、今のところ当店では使っていません。

塩の味は収穫する職人の腕によっても微妙に異なります。今使っているゲランドの塩はレコルト・マニュエル氏の物、カマルグの塩はパトリック・フェルディエール氏の物。


フルール・ド・セルは、その価値を十二分に発揮させるため、料理の最後に必ずふります。 
野菜等はカマルグの塩。肉や、魚は基本的にはゲランドの塩と、使い分けていますが、仕上がりのインスピレーションによって、少し変わる場合もあります。

やはり、きちんと意味を持って塩を捉え、扱うだけでも味わいや印象が大分違います。料理に不可欠な塩がもたらす影響は、料理の根幹にかかわると考えているので、フランス料理である限り、フランスの塩を使うようにしています。

そう、根幹といえば、その料理がなぜフランス料理と言えるのかという定義について、よく自問自答します。それは、
”フランスの技法を使ってるから”
ということだけでしょうか。

考える時に、立場を逆にして、”外国人が作る日本料理を、それはなぜ日本料理だと言えるのか”と置き換えて考えればすこし分かりやすいように思います。

日本料理とは、日本料理の技術を使って料理しているからというだけではやはり物足りない。
ではなにが日本料理と言えるのか。
きっと、いろいろなニュアンスが密接に絡み合っていて、言葉で定義するのは非常に困難なのだと思います。

しかし、それを納得させる方法はあります。

その方法とは、”日本人が食べて、それを日本料理だと認めるかどうか”です。

食は文化。その民族の感性です。その文化を一番良く知る、その文化の中で生活している人が感性によって太鼓判を押す。これ以上の説得力はないですね。

日本に来たこともなく、書物を見ながら勉強し、外国人が料理長を務める日本料理店で経験を積んだ料理人の料理を本当の意味で日本料理といえるだろうか。
それだけでは足りないと思います。日本で直接、自然環境、食文化に触れ、ある程度長い時間を過ごし、考え方、理解の仕方が、文化が、無意識に体現出来るようになって初めて、外国人でも、日本人が食べて納得する日本料理を作れる可能が生まれてくるのではないか。
そうして、自信を得て、日本国内で日本人に日本料理として提供し、対価を獲得した上、日本料理だと太鼓判を押されてはじめて、外国人が料理人として、プロとして、”日本料理を作れる”と言い得るのだと思います。

ここまで料理を追求すれば、必然的に、塩を軽んじることもないわけです(僕の個人的な感覚です)。なぜなら、海外旅行した人なら分かると思いますが、海の味は、それぞれの海によって違う味がします。塩分含有量や、生息する微生物など、気候風土による影響でとても様々な違いが現れ、最終的に味わいが変わってくるのでしょう。
特に日本は海に囲まれ、塩分というのは、いたるところに存在し、日本の大地、食材すべてに影響を与えています。この塩(ミネラル)が、日本らしい味にさせているのだと感じます。

その他にも、空気中に漂う天然の酵母も国によって違います。フランスのワインの香りは、フランスに浮遊する天然の酵母が大きく影響を与えあの香りにしているし、また日本のワインも然りです。

こういう様々なことを真摯に考えると、先に書いた、技術、考え方(料理哲学だけにとどまらず、フランス文学、思想など)や価値観、文化を、現地でフランス人とともに生活し、深くかかわり合い思想や哲学を共有するという実体験を元にした理解によって、得る、もしくは裏付けることが必要だと分かります(言い切っていますが、僕の個人的な感覚です)。そして、塩や、料理酒、発酵食品をフランス料理に使う場合は、フランス産の物でなくてはならないと考えられます(基本的にです。一度フランス料理をプロとして作れる料理人になったあとは、その応用の範囲(フランス料理に他文化の風を加え、より高いレベルのフランス料理を求める意味)で、多いに使っても良いと思います。)。
その根幹さえしっかりしていれば、主食材を日本の産物にしたり、フランス料理に日本の文化を取り入れアレンジしてもそれは応用なのだと理解しています。

(ここからは自分語りで分不相応な自惚れのように聞こえてしまうことを心配にはなりますが、)

僕は、非常に恵まれた出会いや運命によって、フランスの、パリとポー(南仏)2つの店で計3年間シェフとしてフランス人に料理を提供し、

「カズの料理は、日本の個性を生かした純然たるフランス料理だ」

とたくさんの現地の人々にお褒めて頂いて、たどり着いた結論です。

なにより、作る料理がフランス料理だと認められていなければ、フランス人オーナーやオーナーシェフが、外国人にシェフを任せる理由がない訳で、1つ星を持つオーナーシェフ、イヴ・シャルル(パリ)と、世界最年少3つ星シェフソムリエの記録を持つ名ソムリエ、ジャンパスカル・ロヴォル(ポー)に認められ、シェフを託された事実は自分の誇りであり、大きな自信になっています。


長くなりましたが、すべてをふまえてもう一度、

”ビヤン・アセゾネ・ビヤンキュイ、(セ・トゥ)<(料理とは)良い下味と良い火入れ、(それだけだ)>”

という言葉に立ち返ると、核心をシンプルに言い表した素晴らしい言葉だとわかります。

ちなみに、この言葉は、僕の師であるイヴ・シャルル(ラ・メゾン・クルティーヌ 初代オーナーシェフ)がよく使っていた言葉。
哲学的で合理的なイヴという人をよく現している言葉です。

塩だけで長くなってしまいました。

次回は胡椒。
by courtine | 2014-02-20 21:21 | クルティーヌの食材

2月も残すところ後わずか。”香雪蘭”フリージア公開。

2月の特別メニュー ”香雪蘭(フリージア)”  2/1~3/2まで

その名のとおり、雪中花の様な今年の2月。
とても寒かった2月も後わずかですね。

ということで、”香雪蘭”コース公開! です。

まず、最初のアミューズ・ブーシュ。
直訳すると 口の楽しみ。

・・・そういえば、これ、どう説明するとしっくりくるのか・・・。

よく、お通しや、突き出しのような物と言われるけれど、きっと感覚的にはもっと軽い。
別に形式張った物でもないし、かといって、お店からおつまみのサービスですって感じでもなくって・・・。

そう、食事がはじまる前のちょっとした”つまみ食い”のような。

「みんなそろって”頂きます”してからでしょ!」って言われるのが分かっていても、やってしまう(無性にやりたくなる)一口 ”パクッ”とした時の、まるで子供のいたずらに似たあの小さな背徳感を伴う楽しさ。
そんなニュアンスに近い。

その食事がおいしそうであればある程、楽しい食卓であればある程、待ち遠しくて、楽しくて、つい手が出て。
きっとつまみ食いをされたお母さんもそんなに悪い気はしてなくて。
心では(それほど美味しそうなのね)って。
言葉は怒ってても、和やかな雰囲気。
そういうニュアンス。

そんな感覚を、レストランに来てくれたお客さんに楽しんでもらいたいのだと思う。
一品目を待ってる間に「少しだけだよっ」て出して、心の中では(ね?おいしいでしょ?)って言っているような。

それに加え、食前酒を飲む場合の多いレストランでは、シャンパンなどと共に食べる物なので、くっきりした旨味のある一口が求められる。

2つの意味での ”口の楽しみ”

その一口がおいしいと、これからの食事への期待感がぐっと高まる。

それが”アミューズ・ブーシュ”
いかにも 本能(童心)に 純粋(素直)な フランス人が考えた遊び心。 
社交の場で、品のある仕草で、ほんの少し童心を覗かせる行為。
お茶目(気さく)でお洒落な、人間味溢れる素敵な食事の始まり方ではないでしょうか。


さて、またもや脱線、前置きが長くなりましたが、改めて”香雪蘭”コース、公開! です。

2月のコンセプトはやはりヴァレンタイン。きっと男性同士や、友人みんなでというより、恋人同士、女性同士のような、フェミナンなシーンが多いので、女性を意識した、女性に食べて頂きたいコース。になっております。

<アミューズ・ブーシュ>
・オマール海老のガレット
Le petit Galette de Homard
こちらは、活オマール海老をクールブイヨン(水に香味野菜、ハーブ、スパイス、レモンを加え、15分灰汁を取りながら火入れたもの)の中に落とし、5分45秒。オマール海老を取り出し、殻を外し、背わたを取って、カットし、暖かいうちにオリーブ油、エストラゴン、ピマントエスプレット、ムントク胡椒で合え、米粉で作る生地に包み、焼き上げた、オマールの旨味たっぷりな一口サイズ。
ただ、香りがすべてなので、焼きたてです。猫舌の方は(そうでない方も)お気を付けてお召し上がり下さいませ。

今気付きましたが、写真採るの忘れてました・・・。

<冷前菜>
北海道産帆立貝のカルパッチョトリュフソース
Carpaccio de St-Jacques sauce au truffe.
1品目は女性の好きな帆立貝を使い、やはり女性が好むカルパッチョ。そしてヴァレンタインに誘われた方が喜ぶ食材がないといけないので、高級食材のフランス産黒トリュフを。 両者は古典の本に記載があるくらいのマリアージュお墨付きタッグ。

北海道から届く帆立貝を少し厚めにカルパッチョにして、フルールドセル、ムントク胡椒をふり、お皿へ並べる。黒トリュフは、香りを失わないよう、オーダーが入ってから細かく刻み、熊本産のヘベスの絞り汁と浅葱の刻み、トリュフオイルで味を決めて、カルパッチョの上に。
シンプルだけれど、他に何も必要の無い古典から現代まで愛されている組み合わせ。 
こういう王道の付け合わせには元気なサラダ。他に何もいらない。

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<温前菜>
究極の大根のスープ
Soupe de Navet long.
2品目はカロリー控えめで、さっぱりと、でもしっかり体をあっためてくれるポタージュを。
滅多に見られないなく、そして料理人の腕前が如実に現れるごまかしがきかない大根のポタージュ。

その大根は”究極の大根”と呼ばれる、島原で栽培されている大根で、非常に細胞が細かく、細胞壁が薄い。非常に煮くずれやすく、水分が多いのに引き締まっている。大根の香りが強いけれど、丸みのある味わい。
こちらをオリーブオイルと玉葱とともに、水をいっさい加えず、溶ける程まで火を入れる。
つきっきりで、じっくり火入れ。生クリームで味を整える。
大根の葉は、茎と葉に分け、茎と大根の皮はスライスして火入れ、カナペに。葉は、オリーブ油とピュレにする。

大根のポタージュに、茎と皮のカナペ、葉のピュレをのせ、究極の大根のすべてを味わえる一皿をどうぞ。

・・・いつも忘れてしまい。。。

<フォアグラ料理>
フォアグラとちりめんキャベツ
Foie gras au chou.
3品目には、フランス料理と言えばフォアグラ。口の中でとろける食感をお楽しみ下さい。

フォアグラは、鮮度が命。時間が経ち、酸化すると独特の臭いが出てくるので、オーダーが入ってからカットして、そこから焼き始める。
塩加減はもちろん、非常に火入れが難しい食材で、火を入れすぎるとすべて溶けてしまって、スカスカになる。
しかも、このフォアグラ料理は、アラン・サンドランスが古典料理をひもとき、現代に復活させ、時代の寵児と言われた所以の料理。
日本では栽培されないヨーロッパ独特のサボイキャベツ(縮緬キャベツ)と、フォアグラのみを使った非常にシンプルな料理。それ故に、失敗したら最初からから作り直し。
火入れ、味付け、食感、料理の温度、ソースの完成度と絡み具合、すべてにパーフェクトな状態で仕上がったときの、美味しさは、あの有名なゴー・エ・ミヨー両編集長が脱帽&絶賛する一品。
ヌーベルキュイジーヌと呼ばれる時代をつくりだした、その発端となった料理。

ちなみに、サボイキャベツを表向きで使うか裏返しで使うかで味わいが全く変わってしまいます。
それほどに、すべてに意味がある料理。

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<魚料理>
オナガ鯛とホワイトアスパラとピエ・ダン・グロワ
Daurade de ONAGA et Asperge blanc et Pie d’Angroy

4品目は、女性が好むピンクをつかった、フェミナンな魚料理。

今年は出だしが早かった”走り”のホワイトアスパラをフランスから入荷。じっくり火入れて、旨味を引き出す。オナガ鯛は、皮目が鮮やかな赤&ロゼ色。その色合いを鮮やかに引き出す為、今回の調理法はヴァプール(蒸し)。オナガ鯛の身に、ゲランドのフルール・ド・セル、ムントク胡椒、ピマントエスプレットをふりかけ、16分常温でマリネ。60℃の低温でゆっくり蒸し上げ、トロッフワな身質でお皿へ。そして、ソースが、ピエ・ダン・グロワというチーズと赤ワインを使った個性派ソース。
見た目ピンクな女性的な色合いに、男性的な理論の構築をひた隠して、表裏一体な一皿。

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<肉料理>
ブリュゴー家のシャラン鴨のロティ カカオソース
Canard Challandais roti Sauce Cacao

今回のメインディッシュには、やはりチョコレートを。
洒落を効かせたヴァレンタイン特別料理。だが、ただの洒落では料理とは言えない。そこに哲学がなければならない。

まず、肉を鴨の胸肉にする事で、その香ばしい皮の香りと、スパイスと甘みのマリアージュを狙う。
一歩進めて、ただの鴨ではなく、世界に唯一と言われる、ブリュゴー家の鉄分豊富で旨味と滋味がしっかりある鴨の胸肉を使用する事で、滋味と鉄分とシナモンと、カカオの香りの類似性を呼び、栗の蜂蜜を加える事で、その4種を結びつける。そこへ自慢のフォン・ド・ヴォーで、完成度と説得力を高め、コクと深みを与える。
もちろんブリュゴー家のシャラン鴨胸肉(シャラン産鴨とは別ものです。詳しくはこちらhttp://www.bonappetit-net.com/brand000_1.html)は最高の火入れでなくてはならいし、最適な温度で提供しなければならないので、水鳥のように、水面下(調理場)では絶えずトップギアで料理しております。

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<デセール>
苺とホワイトチョコとキュベベ胡椒 
Faise ,Chocolat blanc,Poivre Cubebe.

デセールもやはりチョコレート。肉料理でブラックチョコレートを連想させるので、デザートにはさわやかなホワイトチョコレートを。 
と言っても、ホワイトチョコは精製の時点で砂糖をかなりしっかり使っているので、過ぎる糖度をどう中和させつつ、香りと個性と、クオリティーを高めるかで四苦八苦。旬のイチゴを使い酸味を。ホワイトチョコのムースにする事で軽さを。ココナッツのブランマンジェを入れる事で香りのアクセントに。エストラゴンのジュレがそのすべてを爽やかにまとめる。

そして、キュベベというインドネシア産の特殊な胡椒をふり、そのスパイシーな辛みと、フルーティーな香りで、苺とホワイトチョコを軽やかに結びつける。

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フランス産パムプリー(AOC)無塩バターと、そのバターのために作った自家製パン
Pain et Beurre de Pamplie.

クルティーヌと言えばこのパンという程に浸透して来たクルティーパン。
僕が作るすべての料理に優しく付き添います。



小さな3種のフランス菓子
Mignardise.

エスプレッソのお供にはミニャルディーズは必須。
自慢のカヌレと、パリの頃から続くフィナンシエール、そしてほのかなオレンジの香りが際立つクロカンショコラの3種。



食後のひととき
Café ou Thé.

オープン当初から惚れ込んでいる、阿佐ヶ谷カフェフレスコさんの焙煎豆を使用したエスプレッソとコーヒー または、紅茶でゆっくりと食後の余韻に浸って下さい。



さて、渾身の”香雪蘭”コースは、いかがでしたでしょうか。 

3月2日まで。

まだの方はぜひ、お召し上がりください!
by courtine | 2014-02-19 23:20 | 今月のメニュー、特別メニュー

ベキャス(山鴫)! 

2月18日。
2月はすでに2度も大雪になり、20日にはまた雪が降るそうで、例年に比べとても寒い今期の冬。
皆様とともに、クルティーヌも頑張って乗り越えたいと思います。

さて、ジビエも、もうそろそろ終わり。

フランスではその年ごとにも違うのですが、だいたい10月頃〜2月15日頃までが狩猟期間。
クルティーヌでも2月1日に届いたベキャス3羽と山鳩2羽で、今期最後になります。

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ジビエと言えばやっぱりジビエの王様と呼ばれるベキャス(やましぎ)。
ベキャス(ヤマシギ)は、まだ単発銃を使う頃の狩猟師にとって非常に撃ち落とすのが難しい鳥でした。緩急のスピード差をうまく使い、急降下や急上昇、旋回と、空を自在に飛び回るので、腕の良い猟師にしか仕留められなかったのです。
しかもその肉は、胸肉が非常に発達し、脂も程よく、内蔵が非常に美味。
そうなっては、猟師の腕比べ、自慢、貴族の晩餐などで、非常にもてはやされただろうことが容易に想像出来るわけで、希少価値が高く、高価な取引のもと、乱獲されたという事実が、用意に理解できます。
現在では、フランスではベキャスは禁猟とされ、当店で使っているベキャスはスコットランドから届く数少ない貴重なものです。

さて、一昨年の冬からやっとベキャスを扱えるようになって以来、常連様からリクエストをいただくたび、勉強し、腕まくりして、『ミュー・ゾン・ミュー"de mieux en mieux"』を意識しながら調理をしております。
『ミュー・ゾン・ミュー"de mieux en mieux"』は、イブ・シャルルからよく言われた言葉で、”より良く”、とか、”ますますいい物になる”といった意味です。


まずは丁寧に羽毛を手で取ります。
熟成が進んだ状態での作業なので、表皮が破れやすいため、できるだけ優しくとります。
手の温度で、ベキャスの脂がにじみ出やすくなっているので、できるだけ素早く作業を終えなければなりません。
優しさと素早さの両立を突き詰めて、とても神経を使う作業です。
内蔵を抜き、軽く紐で結び、形を整えます。(ベキャス以外は、基本的に紐は使いませんが。)

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ベキャスは丸のままバターとエシャロットとニンニク一欠片、月桂樹の葉、タイムと共に色付け、サラマンドルという、上火焼きの機材でゆっくりロースト。
そして、少し暖かい場所に休ませておき、提供時にもう一度バターとエシャロットとニンニク一欠片、月桂樹の葉、タイムをくわえ、それらの香りを含みながら溶け出したバターをベキャスに回しがけ続けるアロゼという技法を用いてしっかり温めます。

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さばくと、ちょうど綺麗に火が入ったロゼ色の肉となります。この火入れが、ベキャスはジビエの食材の中では群を抜いて難しいと言われ、その筋肉質の一歩間違えて火を入れすぎればパサついた感じになってしまう肉質と、火入れが甘ければ、熟成の妖艶な香りを引き出しきれなくて、旨味の乏しい物になります。

過去の偉人が言う言葉に、『肉の火入れの才は先天性の才。こればかりは、いくら努力しようが、ダメなやつはダメ。』という言葉があります。
イブ・シャルルも、料理とは、『ビアン アセゾネ ビアンキュイ(良い塩加減と良い火入れ)」それがすべてだとよく言っていました。
人生が、突き詰めると命の尊さに行き着くように、命を料理することを突き詰めると、こんなにシンプルになり、そこをまず完璧に仕上げた上で、技術を重ねてゆかなければ、本末転倒。ただ美しいだけのお皿は料理とは言わない。ただ技巧的なだけでは命に対して誠実だとは思えない。


さて、そのベキャスの非常に繊細な肉質と香りですが、それは30年くらいたち熟したブルゴーニュの一級の赤ワインの感じ方に似ていて、『うオうまい!』ではなく、『ああ、美味しい・・・』という、優しく気品のあるバランスの取れた味わい。
一口食すたびに、心を静寂にし、目をつむり、味わいや香りを逃さないようにしつつ、余韻に浸る美味しさです。


この写真、ちょっとインパクトあり過ぎで、もう少し小さくしたいのですが、どうしたらできるのか分からないので、苦手な方は、ぱっと見てスクロールお願いいたします。
興味のある方はじっくり”ガン見”だと思いますが。。

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こちらは、さばいて胸肉と腿肉を外した後の骨。これを見るだけで、身が最高の状態である事が分かります。この骨を叩き、砕いて、バターで色付け、水とハーブを加えジュをとります。

ベキャスは、特に内蔵が美味しいと言われ、2週間熟成させたベキャスの内蔵を使ったソースは格別。

先程の、ベキャスの骨からサッと取るジュ(短時間で、香りと旨味を抽出した物)に、仔牛の骨や香味野菜とともに2日間かけて作る自慢のフォン・ド・ヴォーを少し加え、ベキャスの内蔵を刻み入れ、60℃くらいの温度まで熱し、裏ごして、ソースに。
余った内蔵はカナペにして添えます。
そうして出来上がった2週間熟成のベキャスを余すところなく使った、お皿がこちら。

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羽毛以外のベキャスのすべて、まさに、命をすべて盛り込んだ一皿となっております。

今夜もこれから、ベキャス、最後の一羽をご予約さているお客様を迎え、今期のベキャスは終了となります。
by courtine | 2014-02-18 17:31 | 今日のピックアプ

まかないで魚が食べたくて鯖を発注したら・・・ 

昨日、ふと、まかない料理で鯖が食べたくなって、(もちろん、スタッフの魚をさばく練習の為にも、)懇意にしている築地の目利きさんに鯖を4尾お願いして、今朝から新鮮な鯖をどう美味しくしてやろうかと手ぐすねして到着を待っていたら、届いたのはこちら。

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綺麗。
しかもむちゃくちゃでかくて、はちきれんばかりに太った、ころっころしたゴマ鯖。
4尾で3kg。
デカいのは1尾で800g越えでありマス。
 
しかも鮮度抜群の活け締めで、ほんっとにうまそう。

まな板にのせたら… 

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立ちます。

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めちゃ、愛らしい。 

え〜っと、ひじょうに身勝手ではありますが、『彼らは俺がさばく。(キリッ)』となって、(スタッフの為の練習用にとったのに。)終えてみればスタッフは、いつも通り小骨の骨抜きだけでした(ゴメン)。

ただ、
こういう素晴らしい美しさは、獲れてからここに届くまでのあいだを、確実に、匠の手により、愛情を持って最善を尽くして届けられた証。
きちんと引き継いで、最高の仕事をしなければ、申し訳が立たないという想いは譲れない。

下処理が進むうちにどんどん愛着が湧いてきてしまって、『骨も皮も内蔵も・・・捨てるところなんてない!』『骨と皮は美味しい出汁にして煮詰めて、少しのチョリソーとドライトマトとレモンタイムと合わせて…』『内蔵は薫製塩をしてさっと火入れて裏ごして深みのあるソースにしよう。』『身のこの部分はしっかりマリネして、白ワインでさっと洗って、水分を拭き取って、表面を少し乾燥させて…』などなど、下処理しながら、色合い、触れた感覚、香り、そういった感性で一皿のパーツがバラバラに構成されてゆく。 出来上がりのビジョンを持って、レシピを考えて、さあ作ろう、とするのではなく、食材と触れて、感じて、その瞬間瞬間、沢山の調理法から取捨選択して、その瞬間瞬間のひらめきを具現化させながら、最高の一皿を食材と一緒に考える。というか、教えてくれる、こうしたいと思わせてくれる。 きっと導かれているんだなと思う。

こういう感覚はやっぱり、フランスで、市場で、畑で、船で、元気一杯の食材達とともに過ごした中で培った感覚。

彼ら(高級食材でなく、ゴマ鯖ですが・・・)を最高の一品にしてお客さんに美味しいって言ってほしい。

そんなこんなで、明日からおすすめの前菜料理として、ゴマ鯖の一皿をご提供致します。
ご興味がありましたら、是非、食べてみて下さい!



あ、そうでした、 今、とても好評の、北海道産ピンクレディー(林檎です)を使ったタルト・タタン。
もう少しでピンクレディーの入荷がなくなるそうで、この酸味と甘みとほのかなバニラ香が自慢の、ピンクレディーでしかつくらないタルト・タタンは、今回入荷した6kg分で終わりになります。
6kgって多そうですが、このタルト・タタンはピンクレディー(リンゴです)を、嘘でしょってくらい使う贅沢なものなので、きっと、そう長くはもたないと思います。

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次作るのはまた来年なので、ご興味のある方は是非お早めに。


では!
by courtine | 2014-02-12 23:50 | クルティーヌの食材