紫陽花コース

今日も少し雨が降り、なんだか湿度の高いこの頃。
「今月からやはり梅雨?」という不安にかられ、早めのご来店を即すため、少しアピールしに参りました。
今回の紫陽花コース、先月の薔薇コースに続きとてもご好評です。
相変わらず原価率は少し大変なことになっていますが、手応えを感じていますので、以下を読んでみてご興味頂けましたら、梅雨に入る前にぜひ足をお運び下さい。


アミューズ・ブージュ 
(一口ずつのお口遊び : フォアグラのマカロン、人参のムース、鴨のリエット)
小さなアミューズが3種に増えました。

ディナーメニューの選択肢が増えたので、ゆっくりお料理を選ぶ方が増えてきました。
内容は天気によって多少変わりますが、まずはこちらをつまみながら、メニューを御覧下さい。

もちろん、月替わりのコースを毎月楽しみにしてご来店下さる方々は、こちらをつまみながらコースを楽しみにお待ち頂けたらと思います。



紫陽花コース

アミューズブーシュは既にお召し上がり頂いているので、前菜から。

前菜一品目

渓流から ”鮎蓼”

6月と言えば鮎。 今年も素晴らしい鮎が全国の渓流より入荷しております。
今年は、その鮎を蓼と共に一皿にしております。 

蓼食う虫も好きずき ということわざがあります。他に草があるにも係わらず辛い蓼を食べる虫も居るように、人の好みは様々で、一般的には理解しがたい場合もあるという意味ですね。

蓼は鮎蓼とも呼ぶくらい鮎との相性は抜群で、昔から蓼酢にして塩焼きの鮎とともに楽しまれています。渓流で鮎を獲り、頭を下に向けて串に刺し、鮎の脂が頭に集まってカリカリになるようにして、全体にきれいな焼き色がつくように焼くのが美味しい。
焼いている間にその近くに生える柳蓼の若く柔らかい葉を摘み、すり鉢でよくすりつぶして蓼酢のつけ汁を作り、鮎が焼き上がったらこのつけ汁にくぐらせて頭からかぶりつく。
香よく焼き上がった鮎の表面は水分が奪われていて、そこへ蓼酢がすっと染み込む。鮎の内臓のほろ苦さと蓼のピリ辛さが融合した深い味わいは、香魚と呼ばれるにふさわしい鮎の一品だと思います。

こういうとてもシンプルで、どのような尺度から考えてもぐうの音もでない程に理にかなった日本の伝統が、僕は非常に好きです。

・・・また話がそれるながれで恐縮ですが、

たまに、日本料理の板前になれば良かったかなと思うことがあります。
自国の文化の価値に目覚めたのは他国の文化を知ってからでした。
往々にして近くにあると、物事の本質や価値を軽んじてしまう。 いまになって、日本の職人の方々にとても敬意を払うようになりました。昔、父が話していたいろいろな日本の良さや価値がようやく理解出来るようになってきたように感じます。
自分が理解するのにとても遠回りして時間がかかったので、今の日本の学生達には、出来るだけ早くから日本の文化の「カッコ良さ」とか、「凄さ」に触れ、見、聞きして、本心から誇りに思えるような伝え方、教育のあり方を考えていきたいなと思うこの頃です。

例えばフランス人を渓流に連れて行き、獲れたての鮎の塩焼きに出来立ての蓼酢をくぐらせて食べさせれば間違いなく感動します。彼らは味覚に純粋です。
鮎はフランスにはいない魚のようで、フランス料理に鮎の料理はありません。(イワナの料理はあります。)

さて、この香る魚。毎年旬を迎える紫陽花の時期には、どうにかしてフランス料理の技法で塩焼きに匹敵する一皿を作りたいと考えていまして、今回の一皿も、そうした思いから出来上がった一皿です。
少し前から、フランス料理では古典料理の分解と再構築を経た料理にスポットが当たり、いろいろなシェフが既存の調理法や、ルセットを見直して新たな料理を考案しています。

今回の鮎と蓼の一皿もその分解と再構築にあたりますが、上記に書いた鮎の塩焼きという和食の良さを一度再分割して、行程ひとつひとつの方法、理由、結果から、そのポイント、味の構成、香の引き出し方(頭に脂を馴染ませながらカリッと香ばしく)などを理解し、フランス料理の技法に置き換えて、構築し直したものになります。

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低温で調理してしっとりて火入れた鮎の身。その間に、鮎で一番香のある鮎の肝と、しっかり焼き上げた香ばしい鮎の頭と骨で作る鮎の香の詰まったペーストを挟み込んで冷やし、ご提供直前に表面を炙りました。蓼にほんの僅かに鮎からとった出汁を含ませることでコクを与え、紅蓼、冬瓜、胡瓜を添えております。
6月を代表する渓流のせせらぎ、香りを、まずは爽やかにお召し上がり下さい。


前菜二品目

ブルゴーニュの葡萄畑から “プティ・グリ”のフリカッセと泡 (葡萄の葉を食べて育ったエスカルゴ 赤紫蘇 らっきょう)

紫陽花と言えばエスカルゴですよね。毎年この時期を楽しみにしています。

エスカルゴは、ざっくりいえばご存知の通りカタツムリのことですが、でも、どのカタツムリでも良い訳ではございません。そこは美食の国フランスの食文化。こだわりがあります。
そのこだわりとは、葡萄畑で獲れるエスカルゴしか食用にしないということです。

ちなみに、エスカルゴは貝です。陸貝の一種。種類も多くの種類があるカタツムリの中で一般に食用に供されるものは主にリンゴマイマイ(別名エスカルゴ・ド・ブルゴーニュ、Helix pomatia、ブルゴーニュ種)とプティ・グリ(petit-gris、Helix aspersa)、グロ・グリ(gros-gris, Helix aspersa maxima)の3種類です。リンゴマイマイは繁殖力の低さから絶滅危惧種で食用での流通はしていません。現在代用品としてアフリカマイマイが用いられることもありますが、フランスでは「エスカルゴ」を名乗ることができず「アシャティーヌ」と表記されている、いわばまがい物のエスカルゴです。残念ながら日本に輸入されているエスカルゴの缶詰はこのアフリカマイマイであることがほとんど。

そしてさらに、クルティーヌではパリの頃から”プティグリ”のエスカルゴしか扱いません。
生産者もブルゴーニュに限り、たくさんのブルゴーニュの葡萄の葉を食べながら育つ丸々太ったエスカルゴです。

収穫してから2、3日餌を与えず絶食させて、胃や腸の中を空にさせ、野菜のブイヨンでしっかり煮込みます。”エスカルゴは巻貝の一種”このブイヨンがまるで上質の昆布だしのようになるので、他の料理にもとてもいい旨味として使えることは秘密です。 

今月は、エスカルゴを薫りよくムニエルにします。大蒜やエシャロット、葡萄や紫蘇をからめてバターでソテーし、赤紫蘇のピンクのソースと、らっきょう風味の白いソースでお召し上がり頂きます。

先日ご家族でいらしたエスカルゴが大好きなブルギンさん(着物の似合う奥さまと、奥様似の娘さんがとっても美人!)も絶賛して頂きました。「僕はエスカルゴが大好きなんだ。去年のエスカルゴもとても良かったけれど、今年のこのエスカルゴも本当においしいね!」と、優しくって、やわらかなお顔が一層ゆるんで語りかけて下さいました。
その心からの笑顔は、僕の胸を温かくしてくれました。

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前菜 3品目
6月のジュラ地方をイメージした一皿(プティポワ、ポーチドエッグ、コンテ、仔羊のベーコン)

僕がフランスに滞在していた7年半の間、折りをみてはフランスの食材やワインの生産者のもとを訪れましたが、ジュラ地方も、とても気に入って何度も足を運んだ場所でした。
ジュラといえば、黄色いワイン(ヴァン・ジョーヌ)で、ジュラ地方でしかつくられません。ジュラの中のアルボワという場所の生産者に、ピエール・オヴェルノワという、自然派ワインの神様とまでいわれるおじいさんがいて、個人的によく訪れました。

オヴェルノワのワイン畑を愛弟子エマニュエル(今はこのエマニュエル・ウイヨンが畑とワインを引き継いでいます)が案内してくれました。
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その夜はパリから持参したユーゴ・デノワイエーの牛肉を焼く。 
店に手伝いにも行っていた、友人であるユーゴ・デノワイエーの肉はどこへ持っていっても喜ばれるので、やはり、こちらにも持っていきました。そして焼きました。(緊張してますね。)
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で、晩餐。

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話は盛り上がり、なんと、89年!

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こちらがピエール・オヴェルノワ。こうみえてワインのことについて語りだすと熱く、そのこだわりも細やかな方です。

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あ、こんな写真もでてきました。
今、ジュラでワインをつくる鏡さんと。なんでも既に鏡さんの手がけるワインは引く手数多だそうです。
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ジュラの素晴らしいワイン生産者ステファン・ティソ。

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ステファンもホント、やわらかで素敵な方です。

他にも、レストランへ行ったり。
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そうそう、忘れてはいけないのが このチーズ屋さん「エッセンシア」。
コンテチーズと言えば、エッセンシアのものが極上。わざわざここまで来る価値のあるチーズ屋さんです。
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今回、このジュラをイメージする一皿に合わせて選んだカップリングワインは、ジャン=フランソワ・ガヌヴァの手による白ワイン。じつは、「エッセンシア」のオーナー、フィリップヴーブレ氏ととても仲の良いジュラ(アルボワ)のワインの作り手です。そういった意味もあり、今回、コンテを使うこのジュラをイメージする一皿にガヌヴァのワインを合わせることにしました。

さて、思い入れの話はこれくらいにして、料理の話へ。

こちらは6月のジュラを想いながら考えた一皿なので、あえてプティポワと表記しました。平たくいえばえんどう豆(グリンピース)。それにしても、グリンピースのイメージって悪すぎると思います。子供の頃、僕は好き嫌いがほとんどありませんでしたが、グリンピースが苦手な子供が結構いました。
正直、それは仕方のないことという思いが僕の中にあります。
普段食卓にでるグリンピースは冷凍のグリンピースばかり、しかもまったく美味しくないですし。缶詰のグリンピースも色がくすんでいてなんだか保存料や添加物の匂いがあって美味しくない。シュウマイにのってるグリンピースも、ほとんどがこの美味しくないグリンピース。チャーハンもこのグリンピース。それこそ、なんで美味しくないのに入れるのか不思議でした。

でも、祖母の畑で獲れたえんどう豆は抜群に美味しかったことを覚えています。
フランスのマルシェや、八百屋で売っているプティポワも、それはそれは美味しいものばかりでした。

この、”6月のジュラ地方をイメージした一皿”は、美味しい千葉産のえんどう豆を使用しています。そして、そのえんどう豆から得られる透明なゼリー、これがまたとっても美味しいのです。
コンテチーズはジュラ県がある「フランシュ・コンテ」(「関東」のように県が集まった地域の呼び名)の名が示す通り、その地域を代表するチーズです。やはり、きちんと主張してくれる24ヶ月熟成のものを。2年かけて水分を蒸発させ、熟成を進めて、アミノ酸がカリッとする、凝縮した旨味のものを使います。そして、沸騰したお湯の中に生卵を落としてプリッ&トロッと火入れた落とし卵と、極めつけに、ハーブと丁字の香をつけてマリネした後、薫製にした自家製仔羊のベーコン。これがまた旨い。 6月の、まだ涼しいジュラ。白い岩肌の見える岸壁、山を駆け巡る羊たち。ピエール・オーヴェルノワの葡萄畑を訪れた時に近所の方から頂いた思い出のプティポワ。そしてコンテ。 
間違いなく美味しいジュラの取り合わせ。
ガヌヴァのワインとともにお召し上がり下さい。

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続く。
by courtine | 2015-06-13 09:49 | 今月のメニュー、特別メニュー
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