質問②「職業病はありますか。」  ③「人気メニューは何か」  ④「シェフになるまでに苦労したこと。」

質問②「職業病はありますか。」

正直、この質問を書かれた生徒の目の付け所に感心してしまいました(笑。
職業を知るのにこの点は知っておいた方がいいことですね。他の職業のこともきちんと理解して、職業病に対する予防策を考えながら仕事を始めることは、ずっとその仕事を続けていくためにも、楽しく仕事を続ける上でも、まさに大切な知識ですね。


「職業病はありますか。」

・料理人は重い大きな鍋を使うことが多く、腰を悪くしがちです。
その対策としては、
重い鍋は、脚力を意識して使い持ち上げる
持ち手を痛めない腕を組むようにする持ち上げ方を実戦する
無理せずに出来るだけ二人で持ち上げ、運ぶようにする

などが挙げられます。

・腱鞘炎になりやすいことも挙げられます。
腱鞘炎は、片手で鍋を持ちながらソースをかけたり、付け合せの野菜を盛り付けていると、左手首に負荷が長い時間かかり、それが慢性的に続くことにより、左手首の炎症を起こしてしまうことが多いように感じます。
この対策としては、腱を常に同じ方向に伸ばしていることの無いよう、定期的にストレッチや、柔軟などの違う動きをさせることです。

・虫歯になりやすい。
これは、味見を頻繁にするので、とても気をつけなければなりません。
虫歯になったり、歯の本数が年齢とともに減ってしまうと、味覚が正常に機能しなくなるので、料理人にとっては致命的。
毎食後、1日3回、歯を磨くように心がけています。


上記3点を伝えました、が、いま、もうひとつ生徒達に伝えておけば良かったことに気付きました(汗。

それは「手荒れ」
改めて後ほど中学生達にも伝えたいと思います。
上記3点は、発症したら結構致命的なものです。腰を悪くしたら体力仕事全般厳しいでしょうし、腱鞘炎は本当につらいものです。重度になると箸も持てなくなる。虫歯は、口内の味覚に即、影響します。歯がなくなるともっと顕著ですし、入れ歯になったらそれこそ味を遮断してしまう。長く料理人を続ける上で考えなければいけない大切な職業病ですね。しかし、手荒れも、皮膚の弱い方には致命傷になるようです。

・手荒れ
調理場に配属されると、まず皿洗いからです。とにかく、皿洗いを徹底してやらされ、衛生観念、仕事の要領、手順、優先順位などを学びます。まずこの皿洗いで先輩に認めてもらえないとはじまりません。逆に、皿洗いを見事にこなせるようでないと、見事な料理が出来るはずもありません。 ここは、最初の正念場だと思って必死にやるところです。
が、ここで手荒れがひどくなってしまう。 かといって主婦のように毎回ゴム手袋をしていては、仕事になりません。冬の乾燥する時期、手荒れはより酷くなります。
あかぎれたリ、ひび割れたりすると、そこから出血してしまったりして、手を衛生的に保てなくなるので食材に触れません。ゴム手袋をするのですが、1年じゅう手袋をして働くわけにもいかないでしょう。
手荒れが原因で料理人の道を断念した将来有望な料理人もいました。
皮膚が弱い体質の方には、料理人の道は厳しいのかもしれません。
料理人は皆、手荒れのケアを意識して行なっています。


「人気メニューは何か」

・ラ・メゾン・クルティーヌの人気メニューは
・熟成肉 (自家製で、大きな塊のまま100日以上熟成させた骨付きの牛肉)
・牛頬肉の赤ワイン煮込み (牛頬肉を赤ワインでマリネしてから、仔牛の出汁とその赤ワインでじっくり煮込んだ料理)
・馬鈴薯を纏った赤座エビ (ラングスティーヌ(赤座エビ)をマリネして馬鈴薯で巻き、鴨の脂で揚げた料理)
・月替わりのフルコース( 今月は 5月に旬を迎える食材と薔薇のフルコース)
・パリの頃からのスペシャリテ(スコットランドサーモンの柑橘マリネ、豚足のクルスティヤン、ラングスティーヌのラビオリ、オマール海老のシャンパンソース、ゲランドの大粒灰色塩を皮目に焼き付けたマグレ鴨とフォアグラのロッシーニ、カスレ (南仏の郷土料理)、チョコレートのスフレ、などなど・・・)

 ④「シェフになるまでに苦労したこと。」

料理人もやはり苦労がたくさんあります。
まず、海外の料理技術を学ぶ為に、辞書を買い、言葉、調理器具の名前など、フランスの言葉を勉強しなければなりません。フランスの文化や、歴史を知る必要もあります。ゆくゆくはその調理法はどうして生まれたのか、どのような時代背景に、どのような環境で生まれたのか、どういう利点があるのかまたは短所があるのか、を理解しなくてはなりません。
食材を仕入れてから仕込みをしてお客様に提供する間にたくさんの行程があり、その行程の全てに技術や知識が必要なので、苦労をしながら努力して身につけてきました。もちろん、20kgの豆の皮をひたすら剥かなければならないような単純作業も長い時間やらなければならなかったり、とても細やかな気遣いが必要な作業を苦心しながら進めることもあります。
下働きの頃は皿洗い、鍋磨きなど後片付けのほとんどをさせられますし、日に何度も調理場の掃除をします。体力的な苦労もありますが、立ちっぱなしで仕事をするので慣れない頃はまず足がパンパンになります。
料理人はかなり長い時間料理に従事しますので、睡眠時間も少なくなります。当然、自分の所為で周りに迷惑はかけたくないので、体力維持、体調管理は最低限きちんとしなくてはいけません。技術を向上させる為の苦労もありますし、普通の社会人と同じように、一般的な苦労のほとんど全てが該当します。人間関係で苦労することもありました。
その他にも、最良の食材を得る苦労や、害虫やネズミを寄せ付けないための衛生管理の苦労などもあります。

「だから、お客様が喜んで下さると嬉しく、だからシェフになれると嬉しく、だからこれからも苦労をし続け、その先の喜びへと繋げていこうと思う。」

のです。苦労によって、自分が成長していることに気付けるようになると、苦労がそれほど辛くはなくなります。

ですが、苦労が徒労に終わってはいけません。苦労をした分、笑顔を頂けるように、知識を増やし、技術を磨き、自分が生み出す料理を洗練させてゆきます。そうすると、苦労は、楽しさ、やりがい、喜びとイコールになってゆきます。

苦労が楽しみに繋がることに気付く。
苦労をするとやりがいが芽生える。
お客様が、必要としてくれて、その結果、笑顔になってくれると、苦労を気付いてくれる喜び、苦労を感謝してくれる喜びが生まれるので、どんなに大変で苦労しても耐えられます。

先程書いたように、その苦労が全く理解されなかったり、がっかりされたり、苦労しても失敗してしまったりと、徒労に終えてしまうのことが一番つらいことです。
そうならないように、努力して、技術や、知識や、人間性(特にこの人間性)を磨いくことが大切です。

人間性で大事なのは、
笑顔の素敵な人になること (気持ちよく笑える人になって下さい。ここだけの話、鏡の前で笑う練習をするのも大切です。周りには気付かれないように隠れて練習して下さい。努力は隠れてするものです。ですがその結果は、隠すことは出来ないし、隠す必要はありません。)
素直であること (自分を知り、嘘や、虚妄でかためない。等身大の自分でいられるように)
感受性が豊で、表情豊かで、負の感情を正の感情で律することが出来るようになる、又は、そう努力すること(現実をきちんと理解し、現実を受け止めた上で、ネガティブではなく、常にポジティブな考えを持てるようになること。)
我慢強く、精錬潔白を心がけること。
だと思います。

人間性は、学校で、友達との間で磨くことの出来るものです。自分を磨くのです。社会人になってから出会う多くの人々が自分に好感を持ってもらえると、苦労は少し軽くなります(もちろん学校生活でもそうでしょう)。
へりくだるのではありません。下手に出るのとは違います。ゴマをするのとも違います。世渡り上手を目指すのではなく、1人の自立した、立派な大人(君たちが思う通りです)を目指して下さい。

例えば、出会った先輩に人柄を気に入って頂ければ、技術や知識をどんどん教えてもらえるようになります。
例えば、出会ったお客様に人柄を気に入って頂ければ、自分が携わる料理に興味を持って頂けます。
例えば、出会った同僚に人柄を気に入って貰えれば、仕事で力を合わせやすくなります。



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by courtine | 2015-05-24 11:23 | 日常
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