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縁の下の力持ち2

だいぶ時間が空いてしまいましたが、たくさんの方のご要望に背中を押して頂き、やっと、クルティーヌの料理に多大に貢献している名脇役達の紹介・続編です。


今回は胡椒。

料理の真髄となる、”ビヤン・アセゾネ・ビヤンキュイ(良い下味と良い火入れ)”に必要不可欠な役者である塩の女房役。

”アセゾネ” とは、下味を意味しますが、料理のレシピ等を見ると、そのほとんどの場合、”塩、胡椒をする”という具合に対で書かれています。
やはり、塩に次いで西欧料理に不可欠な役者です。

胡椒は風味が飛びやすく、特に挽いた後はすぐに香りが逃げてしまうので、本当にその風味を楽しみたいのであれば、粒のままで保存しておき、使用のたびにペパー・ミルで挽くのがベスト。
ボウリングのピンみたいな”あれ”です。
円筒形のボディに擬宝珠のようなハンドルの付いたもので、安価なガラスとプラスチックヘッドから成るものから、木製の、デザインに優れた芸術品まで、いろいろな種類があります。

有名なのはやっぱりプジョー製で、高級品。クルティーヌでもプジョーのミルを使用しています。
フランスの車といえばプジョー社というくらい有名で、車の部品を作るのと同じ精密な技術(螺旋歯車の二重構造が粒を集め、装置の下部へ導き、粉砕前に固定する。)を駆使して作られたミルは、非常に軽く挽けて、使いやすく、壊れにくい。


臼の部分が摩滅しないのも特徴で、その部品に関しては、永久保証を謳っている。適切に使えば、50年でも100年でも使える(はず)。
実際、今、クルティーヌで使っている大振りのミルの一つは結構な年代物で、イヴ・シャルルから受け継いだものだけれど、今あるミルの中では一番使いやすく、一番使用頻度の高い胡椒を入れています。


胡椒は、唐辛子、辛子(マスタード)と並ぶ、世界三大香辛料のひとつです。
ちなみに大航海時代の三大香辛料は、胡椒、丁字、ナツメグだった様ですし、その後シナモンが加えられ四大香辛料とも呼ばれていました。
実は、唐辛子は、コロンブスがアメリカ大陸を発見して初めて世界に知られ、瞬く間に広まった比較的最近のスパイスです。

胡椒は「スパイスの王様」とも言われ、中世のヴェネチア人は、この香辛料を指して「天国の種子」と呼びました。

胡椒は、抗菌・防腐・防虫作用があるので、冷蔵技術が未発達の中世では、王宮料理に欠かすことのできないもので、食料を長期保存するためのものとして極めて珍重されています。
ヨーロッパの様々な料理に使われて、その影響を受けたその他の地域の料理でも使われています。ですので、インドへの航路が見つかるまでは、ヨーロッパでは非常に重宝されていました。
あの十字軍、大航海時代などの目的のひとつは胡椒であったとも言われています。

中国では西方から伝来した香辛料という意味で、”胡椒”と呼ばれました。(胡は中国から見て西方・北方の異民族を指す字、椒は香辛料という意味です)。日本には中国を経て伝来しており、そのため日本でもコショウ(胡椒)と呼ばれます。トウガラシが伝来する以前には辛味の調味料として現在よりも多用されていて、うどんの薬味としても用いられていました。
現在でも辛味の調味料としてさまざまな料理に用いられています。(「胡椒茶漬け」という料理があったという記録もあります)

余談ですが、日本の九州北部地方をはじめ各地で、南米原産の唐辛子の事を”胡椒”と呼ぶ事もあります。主に九州北部にて製造される柚子胡椒などは唐辛子を使います。

続く
by courtine | 2014-04-25 22:06 | クルティーヌの食材
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