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2月も残すところ後わずか。”香雪蘭”フリージア公開。

2月の特別メニュー ”香雪蘭(フリージア)”  2/1~3/2まで

その名のとおり、雪中花の様な今年の2月。
とても寒かった2月も後わずかですね。

ということで、”香雪蘭”コース公開! です。

まず、最初のアミューズ・ブーシュ。
直訳すると 口の楽しみ。

・・・そういえば、これ、どう説明するとしっくりくるのか・・・。

よく、お通しや、突き出しのような物と言われるけれど、きっと感覚的にはもっと軽い。
別に形式張った物でもないし、かといって、お店からおつまみのサービスですって感じでもなくって・・・。

そう、食事がはじまる前のちょっとした”つまみ食い”のような。

「みんなそろって”頂きます”してからでしょ!」って言われるのが分かっていても、やってしまう(無性にやりたくなる)一口 ”パクッ”とした時の、まるで子供のいたずらに似たあの小さな背徳感を伴う楽しさ。
そんなニュアンスに近い。

その食事がおいしそうであればある程、楽しい食卓であればある程、待ち遠しくて、楽しくて、つい手が出て。
きっとつまみ食いをされたお母さんもそんなに悪い気はしてなくて。
心では(それほど美味しそうなのね)って。
言葉は怒ってても、和やかな雰囲気。
そういうニュアンス。

そんな感覚を、レストランに来てくれたお客さんに楽しんでもらいたいのだと思う。
一品目を待ってる間に「少しだけだよっ」て出して、心の中では(ね?おいしいでしょ?)って言っているような。

それに加え、食前酒を飲む場合の多いレストランでは、シャンパンなどと共に食べる物なので、くっきりした旨味のある一口が求められる。

2つの意味での ”口の楽しみ”

その一口がおいしいと、これからの食事への期待感がぐっと高まる。

それが”アミューズ・ブーシュ”
いかにも 本能(童心)に 純粋(素直)な フランス人が考えた遊び心。 
社交の場で、品のある仕草で、ほんの少し童心を覗かせる行為。
お茶目(気さく)でお洒落な、人間味溢れる素敵な食事の始まり方ではないでしょうか。


さて、またもや脱線、前置きが長くなりましたが、改めて”香雪蘭”コース、公開! です。

2月のコンセプトはやはりヴァレンタイン。きっと男性同士や、友人みんなでというより、恋人同士、女性同士のような、フェミナンなシーンが多いので、女性を意識した、女性に食べて頂きたいコース。になっております。

<アミューズ・ブーシュ>
・オマール海老のガレット
Le petit Galette de Homard
こちらは、活オマール海老をクールブイヨン(水に香味野菜、ハーブ、スパイス、レモンを加え、15分灰汁を取りながら火入れたもの)の中に落とし、5分45秒。オマール海老を取り出し、殻を外し、背わたを取って、カットし、暖かいうちにオリーブ油、エストラゴン、ピマントエスプレット、ムントク胡椒で合え、米粉で作る生地に包み、焼き上げた、オマールの旨味たっぷりな一口サイズ。
ただ、香りがすべてなので、焼きたてです。猫舌の方は(そうでない方も)お気を付けてお召し上がり下さいませ。

今気付きましたが、写真採るの忘れてました・・・。

<冷前菜>
北海道産帆立貝のカルパッチョトリュフソース
Carpaccio de St-Jacques sauce au truffe.
1品目は女性の好きな帆立貝を使い、やはり女性が好むカルパッチョ。そしてヴァレンタインに誘われた方が喜ぶ食材がないといけないので、高級食材のフランス産黒トリュフを。 両者は古典の本に記載があるくらいのマリアージュお墨付きタッグ。

北海道から届く帆立貝を少し厚めにカルパッチョにして、フルールドセル、ムントク胡椒をふり、お皿へ並べる。黒トリュフは、香りを失わないよう、オーダーが入ってから細かく刻み、熊本産のヘベスの絞り汁と浅葱の刻み、トリュフオイルで味を決めて、カルパッチョの上に。
シンプルだけれど、他に何も必要の無い古典から現代まで愛されている組み合わせ。 
こういう王道の付け合わせには元気なサラダ。他に何もいらない。

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<温前菜>
究極の大根のスープ
Soupe de Navet long.
2品目はカロリー控えめで、さっぱりと、でもしっかり体をあっためてくれるポタージュを。
滅多に見られないなく、そして料理人の腕前が如実に現れるごまかしがきかない大根のポタージュ。

その大根は”究極の大根”と呼ばれる、島原で栽培されている大根で、非常に細胞が細かく、細胞壁が薄い。非常に煮くずれやすく、水分が多いのに引き締まっている。大根の香りが強いけれど、丸みのある味わい。
こちらをオリーブオイルと玉葱とともに、水をいっさい加えず、溶ける程まで火を入れる。
つきっきりで、じっくり火入れ。生クリームで味を整える。
大根の葉は、茎と葉に分け、茎と大根の皮はスライスして火入れ、カナペに。葉は、オリーブ油とピュレにする。

大根のポタージュに、茎と皮のカナペ、葉のピュレをのせ、究極の大根のすべてを味わえる一皿をどうぞ。

・・・いつも忘れてしまい。。。

<フォアグラ料理>
フォアグラとちりめんキャベツ
Foie gras au chou.
3品目には、フランス料理と言えばフォアグラ。口の中でとろける食感をお楽しみ下さい。

フォアグラは、鮮度が命。時間が経ち、酸化すると独特の臭いが出てくるので、オーダーが入ってからカットして、そこから焼き始める。
塩加減はもちろん、非常に火入れが難しい食材で、火を入れすぎるとすべて溶けてしまって、スカスカになる。
しかも、このフォアグラ料理は、アラン・サンドランスが古典料理をひもとき、現代に復活させ、時代の寵児と言われた所以の料理。
日本では栽培されないヨーロッパ独特のサボイキャベツ(縮緬キャベツ)と、フォアグラのみを使った非常にシンプルな料理。それ故に、失敗したら最初からから作り直し。
火入れ、味付け、食感、料理の温度、ソースの完成度と絡み具合、すべてにパーフェクトな状態で仕上がったときの、美味しさは、あの有名なゴー・エ・ミヨー両編集長が脱帽&絶賛する一品。
ヌーベルキュイジーヌと呼ばれる時代をつくりだした、その発端となった料理。

ちなみに、サボイキャベツを表向きで使うか裏返しで使うかで味わいが全く変わってしまいます。
それほどに、すべてに意味がある料理。

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<魚料理>
オナガ鯛とホワイトアスパラとピエ・ダン・グロワ
Daurade de ONAGA et Asperge blanc et Pie d’Angroy

4品目は、女性が好むピンクをつかった、フェミナンな魚料理。

今年は出だしが早かった”走り”のホワイトアスパラをフランスから入荷。じっくり火入れて、旨味を引き出す。オナガ鯛は、皮目が鮮やかな赤&ロゼ色。その色合いを鮮やかに引き出す為、今回の調理法はヴァプール(蒸し)。オナガ鯛の身に、ゲランドのフルール・ド・セル、ムントク胡椒、ピマントエスプレットをふりかけ、16分常温でマリネ。60℃の低温でゆっくり蒸し上げ、トロッフワな身質でお皿へ。そして、ソースが、ピエ・ダン・グロワというチーズと赤ワインを使った個性派ソース。
見た目ピンクな女性的な色合いに、男性的な理論の構築をひた隠して、表裏一体な一皿。

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<肉料理>
ブリュゴー家のシャラン鴨のロティ カカオソース
Canard Challandais roti Sauce Cacao

今回のメインディッシュには、やはりチョコレートを。
洒落を効かせたヴァレンタイン特別料理。だが、ただの洒落では料理とは言えない。そこに哲学がなければならない。

まず、肉を鴨の胸肉にする事で、その香ばしい皮の香りと、スパイスと甘みのマリアージュを狙う。
一歩進めて、ただの鴨ではなく、世界に唯一と言われる、ブリュゴー家の鉄分豊富で旨味と滋味がしっかりある鴨の胸肉を使用する事で、滋味と鉄分とシナモンと、カカオの香りの類似性を呼び、栗の蜂蜜を加える事で、その4種を結びつける。そこへ自慢のフォン・ド・ヴォーで、完成度と説得力を高め、コクと深みを与える。
もちろんブリュゴー家のシャラン鴨胸肉(シャラン産鴨とは別ものです。詳しくはこちらhttp://www.bonappetit-net.com/brand000_1.html)は最高の火入れでなくてはならいし、最適な温度で提供しなければならないので、水鳥のように、水面下(調理場)では絶えずトップギアで料理しております。

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<デセール>
苺とホワイトチョコとキュベベ胡椒 
Faise ,Chocolat blanc,Poivre Cubebe.

デセールもやはりチョコレート。肉料理でブラックチョコレートを連想させるので、デザートにはさわやかなホワイトチョコレートを。 
と言っても、ホワイトチョコは精製の時点で砂糖をかなりしっかり使っているので、過ぎる糖度をどう中和させつつ、香りと個性と、クオリティーを高めるかで四苦八苦。旬のイチゴを使い酸味を。ホワイトチョコのムースにする事で軽さを。ココナッツのブランマンジェを入れる事で香りのアクセントに。エストラゴンのジュレがそのすべてを爽やかにまとめる。

そして、キュベベというインドネシア産の特殊な胡椒をふり、そのスパイシーな辛みと、フルーティーな香りで、苺とホワイトチョコを軽やかに結びつける。

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フランス産パムプリー(AOC)無塩バターと、そのバターのために作った自家製パン
Pain et Beurre de Pamplie.

クルティーヌと言えばこのパンという程に浸透して来たクルティーパン。
僕が作るすべての料理に優しく付き添います。



小さな3種のフランス菓子
Mignardise.

エスプレッソのお供にはミニャルディーズは必須。
自慢のカヌレと、パリの頃から続くフィナンシエール、そしてほのかなオレンジの香りが際立つクロカンショコラの3種。



食後のひととき
Café ou Thé.

オープン当初から惚れ込んでいる、阿佐ヶ谷カフェフレスコさんの焙煎豆を使用したエスプレッソとコーヒー または、紅茶でゆっくりと食後の余韻に浸って下さい。



さて、渾身の”香雪蘭”コースは、いかがでしたでしょうか。 

3月2日まで。

まだの方はぜひ、お召し上がりください!
by courtine | 2014-02-19 23:20 | 今月のメニュー、特別メニュー
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